楽曲解説:アジアンティー

前曲「Spanish Rose」の熱を冷ます
そんな役割を持っているのがこの
「アジアンティー」です。

もうかれこれ何年も前、
拙作「イェスタディ」という曲以来の
ボサノバです。
「イェスタディ」よりボサノバですね、これは。
ブラジルのボサノバです。

リバーブ(残響感)を多めに混ぜて
楽曲に湿度をもたせています。
東南アジアのような。

この曲の歌詞は
「逃避という主観」を表現ました。
「パレードがくるよ」というアルバムは
基本的に「ユーロポップ」だと思っています。
「ヨーロッパのポップス」的な世界観からの
主観の逃避先に選んだ地はアジアでした。
この歌詞の主人公が
この歌詞の中でいる場所というのは
おそらく異国なのでしょうが、
その内的世界、心象というものは
アジアにはないようです。
これが「逃避という主観」の
姿なのだろうなと思います。

「チェルシー・チェルシー」では
準客観性というものを持ち出して、
アルバムの全体像を補強しましたが、
「アジアンティー」では
主観を浮き彫りにするための
対比として「ヨーロッパ的な」ものの
外側の世界を構築しました。

パレードの中を捜しても見つからないでしょう。
だってここは異国なのだから。

制作以前から
「アジアンティー」という言葉が
ずっと心の中に引っかかっておりまして、
そのタイトルである「アジアンティー」
というキーワードだけを頼りに
曲、歌詞を書きました。
その結果がこれです。

いかがでしょうか。

アジアンティー

西はもうすぐ明日ね テラスは続く熱帯夜
醒めない気持ちの酔いを抜くには
もう少しだけ昨日にいさせて 異国の下でただひとり

乱れた夜会に疲れて散らかる抜け殻たち
先にわたしが逃げたのかしら
不思議なくらい泪があふれてアジアンティーに落ちました

河よ、たなびく河面よ 旅行く船は流せても
十重に二十重に映る おぼろな月は流れないわ

頬をつたってカップの底 想い出が沈んでゆくから
琥珀の苦さは呑み干せないわ… 泣けてくるから

震う弓の音色が むせぶ月にうたう
西も明日になったと なぐさめ諭す子守唄を

河よ、さざめく河面よ 旅立つ船はいずこへ
はるか海を越えても あまりに好きで泣けてきます

泣けてきます、あまりに好きで


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