メジャー(デビュー)を就職先と考えると人生が狂う

音楽で収益を得るということは、
今の時代、本当に容易いことではありません。
日本の音楽産業がピークだった
20年前でさえ、
音楽で食べていこうと思っても
なかなか難しかったのですが、
今ではそれに輪をかけて
ほぼ不可能と言っても良いと思います。

夢のない話になってしまいますが、
少なくとも日本においては、
音楽に関して
ある一定の実力を持てばプロになれる
というものではありません。
逆に言えば、実力がなくても
プロに祀り建てられることの方が多いかもしれません。

僕の周りでもメジャーでで活動していた人、
あるいは今も現役の
メジャーで活躍している人はいます。

メジャーに行けた人の経緯を聞いて
共通することがあります。
音楽でメジャーでやりたいと思った時
必要なのは、
「運」と「縁」と「タイミング」
この3つです。断言できます。
音楽的な実力や素養は
よっぽど絶望的に力不足でない限り
そういったものは求められません。

実のところ、事務所などと契約を結んでいない
下積みで月に1〜2回、
地元のライブハウスで活動をしている程度の
バンド、ミュージシャンであれば
観客動員さえあまり問われません。
どっちみち、サクセスストーリーは
あとからいくらでもでっち上げてしまうのですから。

通知表で言ったら
音楽の成績「2」以上で、
先に挙げた条件の
「運」「縁」「タイミング」に
恵まれた人にメジャーの道が開かれます。

大抵の人はメジャーと契約して
ハッピーエンドだと思っていますが、
実はここからが本当に大変で、
メジャーに行っても売れずに
ほとんどの人が契約を切られて終わりです。
生活は金銭的なことも含めて
むしろメジャーと契約を交わすことで
その質が落ちるケースも多々有ります。

逆にまた、メジャー契約してなくても
知る人ぞ知るというレベルになると、
金持ちにはなれないかもしれませんが、
なんだかんだで音楽中心で生活が回っている
そんな人もたくさんいます。

メジャーデビュー=芸能人とは
世間一般の人は捉えてくれません。
一般の人は
有名かそうでないかという点のみにおいて
評価します。
契約先の有無を気にする一般人はいないのです。

ですから僕などは思うのです。
「就職先」として
音楽でメジャーデビューしようと考えると、
人生挫折する、というか
人生を失敗する、と。
僕はその失敗例だと思っています。

特に今の時代、
音楽ビジネスの構造が根底から
壊れ始めている、そんな時代ですから
なおさらです。

倒産しかけている会社に、
わざわざ一生雇ってもらおうと
面接を受けに行ったりしませんよね。

自分に音楽の力が備わっていると
自負できるのなら、
他力本願で売ってもらおうという
考えは捨てたほうがいいです。

自分のその音楽の力は
自分で収益化、マネタイズする。
それが一番収益性が高いと思います。

今の地下アイドルだとか
ご当地アイドルの類というのは
実はいい例で、
非常に効率のいいマネタイズの方法論に
則った活動をしています。
だから今、この界隈でバブルが起きているのです。
やがて弾けるでしょうが・・・。

あとは自分にそれだけの才能と、
そして根性があるか、それだけなのでしょう。

そして一番僕が切に懸念していることは、
音楽をやる人が、

音楽はお金にならない

趣味にしかならない

こういう思考に陥ってしまうと、
自分の芸の質、実力ががどんどん落ち
巷では質の低い音楽しか流れないという
最悪の悪循環が起きると考えられえます。
というか、
事実、現状、そういう風になりつつあります。
これが怖いのです。
このままだと本当に音楽はなくなり、
少なくとも新しい音楽はなくなり、
過去の名曲をカバー、コピーするだけの
人しかいなくなり、
本当の意味での音楽家がいなくなってしまうのです。

だから思います。
本当に音楽を愛し、
そして深く理解できていると
自負できる人ならなおさらに、
『お金にならなくても、
腕や感性だけは常に磨き続けろ』と。
いや、というより
「食えない」で諦めるのではなく、
「食える方法を見つけろ」と。
僕もその方法論を探している一人です。
メジャーデビューしなければ食えないという認識は
完全に間違いです。

江戸時代、400年戦のなかった時代の武士は
その刀を使うこともないのに
手入れを続け、武芸の鍛錬を怠りませんでした。
いつか来るかもしれない有事のために。
けれど、武士は結局必要なくなり
いなくなってしまいました。

これは今の音楽の実情、
またミュージシャンの立場と
似通う部分があると思います。

もうこの先、音楽に本物が求められることは
ないかもしれない。

けれどミュージシャンを名乗るなら
たとえ必要とされなくとも
死ぬまでその魂を磨き続けろ、と。