自然な音楽

まあ僕などはきっと、
商業的に売れる音楽を作る才能は
無いのだろうなと、
この歳になってようやく気付いたので(笑)
今はただただ、
自分の美学だけを信じて音楽を作っています。

音楽活動全体で見れば、
自分自身、結構ぶれていた時期もあったのですが、
自分の音楽に関して
「売れる気がしない(笑)」と悟ってからは
僕の音楽は概ね一貫して
ブレることなくやってこれたと思っています。

特にここ数年、
要は今やっているスタイルでの
音楽活動がそれなのですが、
使う機材が進歩したおかげで
本来の自分が模索していた
イメージの通りの自分と自分の音楽を
矛盾なく表現できるようになってからは、
もうあとは自分の信念だけが問われるような、
そういうところまで達した気がしています。

まあ、それはそれなりに
まだまだ極められていない部分はあるのですけど、
今自分のやっていること、
あるいはやろうとしていることというのは、
たとえそれが
時代の潮流から乖離したものであっても、
絶対に間違っていないという自負があるのです。

むしろ「音楽の本質」という点から見れば、
今の商業音楽の方が
音楽から乖離しているとさえ思えます。
今、流通している音楽は僕からすれば
『間違いなく不自然』だ。

もともと僕も若い頃は
それなりに音楽で
良い思いをしたこともありますから、
音楽人生の山あり谷ありの
今ここが谷底だと思って、
ひたすら愚直に「自分にとっての最高の音楽」を
極めていくことこそが、
自分の音楽人生に課せられた
課題なのだろうなと思うのです。

人生において、
何かしらがうまくいかない時、
変えてしまった方が良いことと、
変えずに貫いた方が良いことの
ふた通りがあると思うのです。

僕の音楽に関しては
後者の貫くべきこものなのだと
僕は信じています。

ここでポピュラリティに屈して
自分に託される音楽を
変えてしまうことは、
絶対にあってはならないことだと考えています。

多分、僕の音楽は
一生、日の目を見ない気がします。
僕が死んだら、そのまま
跡形もなく消えてしまうのでしょう。
今でさえ、このような状況なのですから
僕の死後ともなれば
このようなただの素人の作った音楽など
耳を傾ける人は誰一人いないのでしょう。

けれど、いや、
そうであるのだからこそ逆に
自分が美しいと思えるもの「だけ」を
作っていこうと。
これは決して自己満足ではありません。

なぜならば、
僕は自分の思う美しいものを
他のそれと比べて、
どこがどのようになっているから
美しく感じるのだという
完璧なロジック、公式、法則を持っているからです。
主観的な好き、嫌いという基準軸とは別に
音楽として求められる正しい美しさの
客観的な絶対軸を持っているからです。

そして僕はその法則や定理に基づいて
音楽を作っているだけなのです。
いや、作っているというより、
「音の現象」という自然の法則を
ただ描き写しているに過ぎないのです。

だから僕は少しも偉く、賢くもないので、
奢ることはないでしょう。
かといって、
完璧な音楽の黄金律を知っているという点において、
自分を卑下することもありません。

ただただ、ひたすらに
美しさの法則に則った音楽を
物理的な音にするだけ。

「不自然ではない音楽」を
表現することが僕の務めだと信じています。