中島みゆき- 恋文

正直なところ、
およそ90年代以降の
中島みゆきさんの作風は
ポジティブでパワフルなものという
個人的な印象もあって
食わず嫌いをしていたのだと思いました。

彼女の作風は
ネガティブでしみったれて、
疲れ切った心の底に沈殿する
弱く微かであるにもかかわらず
なぜだか重いパワーこそが真骨頂だ、
中島みゆきは
「人生の応援歌など歌ってはいけない」と
僕は思い込んでいました。
だから食わず嫌いだったのです。

この作品は2003年の作品。

見事に中島みゆき作品でした。

とりわけ、アメリカで錚々たる
ミュージシャンやエンジニアを起用した
お金のかかった、意欲作ということもあるのでしょうが、
最近になってようやく聴いたこの
「恋文」というアルバムは実に良かったです。
干支が周回遅れですが・・・(笑)

大人であるほどに心に沁みる
この作品群は、
初期の作品(70年代とか)と
同一の方向に向けられつつも
30年分の熟成が効いて
旨味もひとしおだと感じました。

このアルバムの
「寄り添う風」のサビの歌詞

寄り添う風 ただそれだけでいい あなたの袖を揺らして
寄り添う風 ただそれだけでいい 私は彼方で泣く

この歌詞そのものが
このアルバムだけにとどまらず
中島みゆき作品全体を象徴していると
僕は考えます。

無遠慮に頑張れと歌う人じゃない、この人は。
上記の引用のような歌を歌う人だと
僕は思うのですが。

この人の音楽、歌は
もっと人の魂に近い部分に位置していると思うのです。
そして、音楽性はどうであれ
音楽というものの本質を実践できて、
かつそれを一つの商売として成り立たせている
稀有な人でもあると思います。

僕もごにょごにょと
言葉を濁してますが・・・(笑)

僕は今一度、彼女の作品を
先入観なしで見つめ直す必要があるようです。

ただ、70年代から
ほぼ毎年アルバムを出しているような人の作品を
紐解くには財布が痛い・・・(笑)