「幸せのひこうき雲」

$鮎沢郁弥のLes Fragments d'ete(あゆさわいくやの夏のカケラ)
「幸せのひこうき雲」
安達哲氏の作品です。
「文学を超えた」という触れ込みだったので
買ったのですが、
いざ買って中をパラパラっと見てみたら、
過激な性描写がたくさんあるため
「ぅわ・・・何?このエロ本??」
といささか引いたのですが、
とりあえずと思って読んでみると・・・。
凄かった。
「文学を超えた」というのは
大袈裟な評価ではないと思いました。
主人公は親が離婚し、
東京から父方の(父親は訳あって不在)
田舎の祖母の家に引っ越し、
転校してきた小学生。
そこで待つのは
これもまた訳あって
意外な過去を持つ美人女性教師。
滅多に電車の来ないような田舎の小学校という
閉塞した環境は
そっくりそのまま、その美人教師の
閉塞した人生の縮図でした。
自身の暗鬱なる劣情のやり場を、
子供たちの閉じた世界の中へ向けて
持て余しています。
そこに主人公の小学生がやってきたのです。
とある事件をきっかけに、主人公は
歪んだ劣情をもたげる女性教師の
性の捌け口とされていきます。
果たしてこの女性教師は
主人公の小学生との異常な関係を通して、
自分の救われる事の無い人生に
どのような拠り所を見いだしていくのか。
そういう内容の物語です。
ぱっと見だけだとポルノにしか
見えない漫画なのですが、
作品全体を漂う
閉塞した真空の空気感と
胃が痛くなるような緊張感に、
エロなど二の次、
どうでもいい要素に過ぎない事に気きます。
そして読み終わった後、
心に染みます。
挫折へと突き落とされても
誰も助け舟を出してくれない
やるせなさを実にリアルに描いています。
しかしそんな人生もまた
尊いものであるかのように
描ききったのは見事としか言いようがない。
この漫画にはこう、なんというか・・・そう。
池田満寿夫を感じるんですよね。
芸術であり、純文学なんですよ。
僕は個人的にこの作品に
芥川賞を捧げたい。
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