夢が餌になる・・・

ごく若い頃から音楽に目覚め、
楽器や歌の練習に明け暮れ、
ライブハウスあたりで伝説を作り
やがてメジャーデビューで大スターに。
(ただし裏事情あり)

こういうシナリオを実践できたのは
1980年代初頭から
1990年代の終わりまでだったのでしょう。
まだ「まぐれ」があった時代の話です。

時代の大波と
活動のピークがうまく同期できた人は
結果はどうであれ、
それなりに夢が叶った時代です。

21世紀に入ると、
そういう夢のあるシナリオに憧れる若者を
資本が食い物にするようになり始めたのです。

音楽業界の一線にこそいませんでしたが、
僕自身、内情を見ていて
10数年前から「?」と
訝しく思えることが多々ありました。

その「?」がやがて
「??」になり、
さらに「????」になった今、
案の定、音楽が売れずに
業界全体が困窮しているありさまとなりました。

2010年代に入ると
完全に音楽産業は引き潮状態となりましたが、
組織化された資本というものは
それでも日に日に業績を上げなければならない、
そういう仕組みになっているので、
潮が引いた後でも
満ち潮だと言い張らなければならない矛盾が
そもそもの「音楽のあり方」そのものさえ
歪めてしまい、今、
その結果が目に見える形で現れ始めています。

前述のように、
もう「まぐれ」は起きません。
昔起きた「まぐれ」の
あらゆる案件はすべて研究され尽くされ、
また意図的に引き起こせることが
わかった時点で、
それは予定調和となり、
何のエネルギーも持たない
「産業のギミック」の一つになるからです。

そして若い人も、
「音楽という社会の歯車」になることを
是としてしまったところで、
「音楽を志す気持ち」をくすぐることで
お金が取れると、
悪い大人が思いついたのです。

ここにオタク産業やら
時には行政や商工会のような組織まで絡んできて、
「音楽を愛する気持ち」が
何よりまず金銭に換算され、
力は吸い上げられていく。

それが今の日本の音楽を取り巻く環境なのです。