iRig Acousticを試してみた(訂正あり)

ちょうど昨日、12月4日に発売になった
IK Multimedia社の
アコギ用マイク、iRig Acousticを
早速買って試してみました。

IK Multimedia社は
iRig(模造品が出回るくらい、この界隈ではヒットした)や
ギター、アンプシミュレーターでお馴染みの
Amplitudeというアプリ、ソフトで有名です。

最初に言っておきますが、
提灯記事じゃありません(笑)

アコギの宅録に光明

さて、僕のように
宅録人にとってアコギに関して
自宅で雑音の入らない録音をするというのは
極めて至難の技であります。

エレアコのピックアップではなく、
やはりマイクで拾った
実際のギターの音を求めるとなると、
可能な限り遮音された部屋で
録音することとなるのですが、
特に曲の終わりの最後の1ストローク、
アコギのコードの「ジャーン」で
終わるような楽曲は拷問に等しいものにもなります。

こうなってくると
リハスタに機材持ち込んで録音するだとか、
そういう面倒くさくも、その都度コストの要する
手段をとらざるをえなかったりします。
これはやりたくない。

というか、そもそも
スタンドのマイクを立てて
マイクの指向性を気にしながら
できる限りマイクの距離や角度を変えないよう
ガチガチの姿勢でギターを弾くというのは
演奏上、好ましくないし、
何よりとにかくアコギを録音するための
機材の設置はとにかくめんどくさい。

というわけで、飛びついて
早々に入手したのが今回のこれなわけです。

IMG_0003

早い話がギター用のピンマイクですね。

楽器用のピンマイクは
バイオリンや金管楽器などでは
今でも普通に利用されていますが、
そもそも考えてみれば
ギターに関して、こういう方向に
音の集音の進化を何故しなかったのだろうか、
そこが不思議です。

上記の写真のように、
ギターのサウンドホールにくっつけるマイクですので、
原理としてはエレアコと同じですが、
どうもiOS(Android)用のアプリを使って
胴鳴りを集音したものをキャリブレーションして、
マイクを立てて集音したような音を
モデリングしているっぽいです。

試聴条件・設定

とりあえず音を出そう。
ということで、
僕のフルセッティングではなく、
最低限の機材のみを使って
音を出してみました。

使用機材、条件としては、
今回のiRig AcousticのLine Outから
いつもライブで使っている
MOTUのオーディオインターフェイス、
Micro Book IIのLine Inに直接つないで、
Mac上のDigital Performerに流し、
オーディオインターフェイスからの
ヘッドフォンで
モニタリングするという方法をとりました。

iRig AcousticはMacにも対応と
書かれているのですが、
現状(2015年12月現在)、
実質的にiOSデバイスの
専用アプリ(有料、無料)を介さないと
音は出ません。
iOSデバイスにはiPad mini4(A9A8でした)を使用しました。

パソコン版アプリでの今後の
フォローアップが期待されるところです。

設定に関しては、
最初に専用アプリを立ち上げた時、
入力レベルと
ボディの鳴りのキャリブレーションをするのですが、
これは簡単な指示に従うだけで
すぐに音が出せるようになります。
キャリブレーションしたデータは名前を付けて保存でき、
例えばスチール弦のアコギのキャリブレーション、
別のナイロン弦のものなど
後から追加、選択ができます。

音質

このiRig Acoustic、実売¥8000弱です。
それを前提に、この機器(マイク部)の性能を
評価すべきだと思われます。

それを踏まえて考えれば、
まあ並みの質、値段相応でしょう。

けれど着目すべき点としては、
例えば一般的にアコギのオンマイクとして
使用される(と思う)
SURE SM57(¥9000程度)を
常に一定かつ適切なポジションで
良質の録音することを、
しかも自宅でできるかという点でみれば、
SM57で録るよりiRig Acousticで録音した方が
総合的に見れば
良好な結果が得られるのではないかと感じました。

少なくとも、
マイクとの位置関係を気にしながら
録音をするという煩雑さからは
解放されると思います。
ここは絶対的に評価されるべき点だと思います。

必要ならオンマイクにiRig Acousticを使って
手持ちのアンビエンスマイクを適宜、
重ねればいいのだと思います。

専用アプリ(無料版)には
プリアンプ(というか卓?)のシミュレーター、
コンプ、EQのストンプのエフェクターが
装備されています。
A9A8プロセッサに於いて、
レイテンシーを「Ultra Lo」
つまり最短に詰めても、
まだちょっと遅延が気にならなくもないですが、
ギリギリ許容できる範囲です。

また、アプリ側のゲイン次第では
いかんせん、どうしても
ブロードバンドノイズは拾ってしまいます。
録音の場合、設定によっては
このブロードバンドノイズの除去が
必要とされる状況が生じる可能性も感じました。
と言っても、
マイクを立てて同じ入力レベルで突っ込んで
自宅でこれ以上のS/N比で録音できるかと言えば
無理だと思います。
もちろん、ピーキーなセッティングをしなければ
概ねノイズはほとんど聞き取れません。
よって、そういう意味では
より低ノイズな録音は
実現できるのではないかと思われます。

iRig Acousticは実際、マイクですし、
集音するものもまたアコースティックなものですので、
マイク部だけが音質の要とも言い切れない部分があります。
自慢のマイクプリを所有しているという方は、
専用アプリのエフェクト(プリアンプも含む)を
全てバイパスして、オーディオインターフェイスなどから
所有のマイクプリに入れた方が
良い結果が得られるのではないかと感じます。
レイテンシーも発生しませんし。
(僕はまだやってません・・・)

脱エレアコ時代の到来

ちなみに、専用アプリの有料版では
コンプやEQ以外のエフェクトとして
12弦ギターのモデリングや
ベースのモデリングを可能にするエフェクター、
さらにギターのボディーのモデリングするものもあり、
エレキギターのアンプシミュレーターが
ここまで市民権を得るようになったように、
アコースティックギターも然り、
様々なアコースティック楽器(例えば名器のモデリングとか)も
シミュレーターでまかなう時代の到来を感じさせます。

その辺の初心者セットのアコギでも
シミュレーターやモデリングの技術で
高価なギブソンのビンテージアコギと
同じ音が出せるようになる、みたいな。
10年もすれば、そういう時代になっていることでしょう。

欠点

欠点もなくはないです。
上の写真を見ればわかると思いますが、
マイクのシールドコードは細く、
また見るからに断線しやすそうな構造です。
シールドコードやその接合部が貧弱なので
写真にあるように、
装着するときはテープなどで固定して
引っ掛かりを防止する対策をした方がいいと思われます。

で、買いなのか?

前述しましたが、
ギターのマイクに関して、
なぜこういう方向に進化しなかったのだろうかと
疑問に思わせるほど
理にかなった製品であることは間違いありません。

むしろ、これからアコギの(そこそこな)録音のため
SURE SM57でも買うかと検討している人にとっては、
十分に比較検討に値する製品だと思います。
上述の僕が試した諸条件の元なら
安定したマイクポジションの確保と
S/N比の観点から考えて、SM57より
iRig Acousticの方に軍配があがると
僕は評価します。

また、エレアコじゃないけれど
ライブでPAを通して鳴らしたいという人にとっては
もう、これ一択だと思います。

SM57より若干安価で
それと同等以上のパフォーマンスは
得られるように感じました。

以上の点から「買い」だとは思いますが、
現状(2015年12月)、
すでに売り切れ多発で品薄気味なことと、
そこまで「当たれば」
iRigのように後続品として
より高性能なものを搭載した機種が
発売される可能性もあります。

マイクを立てるのに、ほとほと嫌気がさしている人、
あるいは従来のマイクでは
雑音をどうしても拾ってしまうような環境にある人は
この製品で決まりだと思います。

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