所詮、人とは下衆なもの

品性、品格。

実はいつの時代でも
人は往々にして
「最近は人間が低俗になった」
と嘆く人はいるものです。

それは果たして本当でしょうか。

2千年、3千年という長いスパンで
人類を見た時、
確かに科学的な分野では
信じがたいほどの飛躍を見せたのは事実です。

ただ、その高度な技術、知識によって
逆に人間は退化したとも言えます。

それは過去、かつての先人が
精神が病むほどに考え抜いて行き着いた答え、知恵を、
後の人はただ「覚えておく知識」としてしか
捉えられないがために、
考えなくなり、結果的に退化してしまう部分も
あるのだと思います。

故に「最近の人間は低俗になった」という言葉は
そういう意味においては正しいのかもしれません。
千年単位で人は劣化していると言えるのかもしれません。

しかし、「ここ最近」位のレベル、
せいぜい1世代単位での
人間の程度など大して変わらないのだと思います。

「最近の人間は低俗になった」と思えるのは、
それはかつて自分が通ってきた道を
他人が同じ轍をたどっている様に
自分の過去を重ね合わせるから
そう思えるだけで、
実のところ「低俗になった」と
無責任に言い放てるその人もまた、
それがかつての自分の姿である事に
偽りがないという点において、
その低俗なるものと一括りにできる
全体の一部なのでしょう。

そう。
そもそも人間というものは
根本的に「低俗」なのです。

下品なものに面白さを感じたり、
命を軽んじたり、
傲慢で怠惰で強欲で嫉妬深く、
怒りや悲しみをコントロールしようとするどころか、
それすら見ないようにしている人間もいる。

でも、それが人間というものなのだと思います。
昔から、それはもう本当に昔から
人間というものは根本的に
下衆な存在なのでしょう。

そういう下衆な人たちに囲まれながらも、
自分もまたそれと同等のものであるから
今ここにいるし、人間を甘んじているのでしょう。

人間の根本そのものが低俗で悪趣味なものであるのだから、
あるいは、交渉なる美しいものを未だ知り得ないが故に、
人は人として生まれ、人として生きるのだと思います。
何が整ったものであるのかを知るために。
あるいは、もともとそのようなものなど
知る必要もないのかもしれませんが。

それでも人は、その周りの
低俗かつ悪趣味なるものに対する違和感から
何が美しく整ったものであるのかを
必然的に考えるようになるのは事実です。

と言うよりそもそも、
美や均整、調和や美徳と言ったものの概念は
ひと度でも混沌の中に身を置かなければ
知り得ないものなのです。

はじめのうちは
そんなものだろうと気にも留めなかったりするのでしょうが、
いつか気づく時が来るのです。

いや、美しくあるべきなのではないかと。
美徳たるべきなのではないかと。

そこに気づいてしまうと、
多分もう平凡、平均的な人の群れの中へは
もうか帰れなくなるでしょう。

いい大人はもう、小学生の輪の中に
溶け込めないのと同じように、
周りの人と混ざり合えなくなる。

これは葛藤です。いらだちすら伴うかもしれません。

世間という喧噪に失望して
世捨て人になる人もいるかもしれない。

けれどそうした壁を越えた時になって
ようやく悟るのだと思います。

そもそも人間というものは
そういう生き物なのだと。
破廉恥な間違いを犯されて
破廉恥な返し方をして
延々と一つの事にこだわり、
それが何百年と続いていく、
その繰り返し、永劫回帰の世界というのが
この人間を生きるという事であり、
またそれを生かされるがために
今、人としてなんぴと足り得るのか、
それを考える人、それが自分であると。

そもそも人間という存在と
その世界自体が実に穢れたものであり、
またこれからも永劫に穢れたままであり続ける
宿命を持っているのかもしれません。

永劫回帰の輪はきっと永遠に昇華されない。
その世界が浄化されていくのを待つより、
きっと自身からその必要性をなくし
輪から出て行こうとしない限りは。

人の意識の可能性というものは、
人間という肉体の枠を
やがて超えるようになっていくはずです。
肉体が窮屈に感じるようになっていくでしょう。
おそらくこうなったらもう、
その精神というものは肉体を必要としないものとなるはずです。

そもそも肉体そのものは
実に極限的にできています。
人の精神性、創造性のもつ可能性のほとんどを
制約された不自由さこそが肉体なのでしょう。

きっと肉体というものに精神が宿るという事は、
一過性の、ある種の通過障害のようなもので
それも収束すればまた
本来の創造性の源へと帰っていくのかもしれません。
それを人は「死」と呼ぶのでしょう。

低俗で粗暴で、がさつなものたちが
跋扈するのが人間という道、世界なのだと思います。
僕も含め、誰もが今
この人間を体験しているし、
自分の中に宿る人間を確認するために
今を生きているのかもしれません。


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