ビートルズとお経

昨日、「お経」のお話を
書いていた時にふと思った事があるのですが、
ビートルズの名曲「Let It Be」
この曲って
歌詞に込められたメッセージも然り、
その文章構造的な観点から見ても
これって完全に「お経」ですよね。
サビで最重要キーワードであるところの
「Let it be~」を連呼するあたりは、
正にお経のそれと同じ
作文技法といっても過言ではないと思います。
「Let It Be」の訳詞を調べるなどして
読んでもらうと分かりますが、
その内容は
表現方法も含めて
多くのお経で語られていることとの
共通点を見いだす事が出来ます。
もしかすると
この曲の作詞、作曲を手がけた
ポール・マッカートニー氏が
この曲を創った当時、
東洋思想、東洋の宗教的世界観、
そうしたものを
見聞きして、それがこの作品の
バックグラウンドとして
活かされているのではないかと
つい根拠もない推察をしてしまいます。
東洋的宗教観を語る時、
エゴを超越したレベルでの
現状の是認とそれの受容の実践は
その思想の基幹である
としてもいいと思われます。
つまりポール曰く
「Let it be(あるがままであれ)」
なわけですよ。
欧米文化、宗教観を背景に持つ
イギリス人であるところの
ポール・マッカートニーがそう語った事は
非常に興味深いです。
キリスト教圏の人間というのは
一般的に総じて
常に十字架を背負い、
何かしらを「課す」民族であったりしますから、
そうした「課せられた自分」という重圧を解放し、
現状をフラットかつ
絶対的に肯定することによって
苦悩からの脱却が可能であることを、
欧米人である彼が示唆した事に
大きな意味があるのではないかと思ってしまいます。
古今東西、ポピュラーミュージック全般に
言える事でもありますが、
それらの音楽の歌詞の中で
一番言いたい
メッセージ、論点を決め台詞にして
サビとかで連呼するパターンって
よくあるじゃないですか。
これって「お経」にも存在するんですよね。
お経に込められた教義の
もっとも重要なポイントを、
韻を踏みながら連呼するタイプのものです。
お葬式や法事などに出席したりして
「お経」を聞いた事のある人なら
ふと気付いた人もいるのではないでしょうか。
何を言っているのか分からない
音韻の羅列の中で、
突如現れた
呪文のような耳ざわりをもつ
不可思議な言葉が連呼される事に。
そうした部分は大抵
その「お経」のコンセプトだったり、
決め台詞だったりするんですよね。
そしてまた、
お経にしろポピュラーミュージックにしろ、
その「決め」になる音韻を
発する事によって
聴く人の心理に働きかける
いわば言霊のようなものとして
メッセージの持つバイブレーションを
その「場」に形成させる意図があるのは
どちらにも言える事かと思います。
そうした観点から考えるに
やっぱり
「Let it be」の連呼と
その前後の文脈、論旨を対比させつつ
この曲の歌詞全体を総合的に読み解くと、
ビートルズの「Let It Be」という歌は
非常に「お経」に似た性質を持ち、
限りなく「お経」に近接した方法論で
作られていると思えてならないのです。