三島由紀夫は変人だったのか?

いきなりですが三島由紀夫。
戦後の作家です。

今となってはテレビで生前の映像を
流す事も無くなり
完全に影が薄くなってしまっている昨今です。

もう知らない人もほとんどだと思うので、
ざっくり簡単に説明しますと
三島由紀夫というひとは、
日本には平和憲法とされる憲法9条があり、
そこで武力を持たず戦争しないと
明言されているのにも拘らず
自衛隊というものがあるのは矛盾している。
つまりそれは「武人」として恥である。
そう考え至った人で、
武力行為の出来ない自衛隊員である軍人(←ここの違和感に注目)は
国を守るための存在であるべきであるから、
自国を守るための「国軍」として
軍隊を復活させるために、
当時(1970年)の自衛隊員に向けて
直接クーデターを呼びかけたものの、
平和で豊かになった国に住む自衛隊員にさえ
「ひっこめ」呼ばわりされ、
挙げ句の果てに割腹自殺をした人です。

長くなりましたが、
いきさつをざっくり説明しても
これくらいの長文になるのが
後の「三島事件」と呼ばれるこれです。

もちろん、この事件があった当時というのは
僕はまだ生まれてはいません。
もしかすると、母親のお腹の中には
いたのかも知れませんが。

40年以上も前の事件ですから、
国軍の復活を訴えるも、
当事者足り得る自衛隊員から一蹴されて
切腹をしたと言う
センセーショナルなインパクトも薄れ、
あの三島事件とはこういう事件だのだろうと
冷静な評価を述懐する記述がネット上にも
いくつか上がっていたりします。

ある人は言います。

あれはナルシズムが最も破壊的な方向に振れた
成れの果てだと。

これに関しては僕もそのように感じます。
これが最も正しい評論だと僕も感じます。

ただ、一般的な三島事件の評論として
最も多い評価はおそらく、
「三島由紀夫が変人だっただけ」
というものでしょう。

しかも、教師が
彼は変人だっただけだと
生徒に教えたりもするそうで、
多分おそらく
ただの変人だったとしか映らなかった
教師のそれは、
三島由紀夫のメンタリティとインテリジェンスからは
およそ相容れないほどに
ほど遠い下衆な感性であるのだろうと感じます。

けれど、一般論としての
三島由紀夫像というのはおしなべて
変人なのでしょう。
彼が語った荒唐無稽な事も
実は今の日本を暗喩するものがあったのだとしても、
未来の予見などできない下衆な民衆には
ただのナンセンスとしか映らないのだと思います。

日本人に限った事ではないのでしょうが、
一般的な民衆というものは
物事には本質があるという根本的な事さえ
考えが及ばない愚衆なのです。

三島由紀夫はそれに怒ったのだと思うのです。
三島由紀夫流に言うなら
そういう愚民が美しくなかったのでしょう。

彼は割腹自殺をしました。

きっとこの割腹は
自分に向けたものではないのだと思います。
彼にとってこの割腹は
己を殺す行為ではなかったのでしょう。

この目の前にある愚衆の集団を
抹殺する代替行為としての
自決だったと僕は考えます。

そこまでの決意を持って成した事も、
結局は後年になって
「彼が変人だったから」で片付いてしまうのが、
人の世なのでしょう。

確かにいろいろ文献を漁ってみると、
彼の「国軍」というものの扱いに関する考え方は、
綻びもあるように思えますし、
今の時代とは刷り合わない部分もあります。

しかし、歪に構築された戦後秩序に
光を当てた事も事実ですし、
それは時には警鐘となり、
時には本質を語る哲学であった事も事実だと思います。

そこを捨て去り、いや、理解せず
センセーショナルな部分だけを取り出し
実体の無い政治運動のアイコンとしてのみ
都合良く利用する。

ここが人間の愚かしさなのだと思います。

虫酸が走るこの人間の愚かしさ、
三島由紀夫はきっとこれを嫌ったのでしょう。

以前僕自身もここで語りましたが、
元来人間というものは下衆で愚かな生き物なのです。
そういう性質を持っているのが人間なのです。

そういう愚かしくも蒙昧な感性からすれば
それは単なる変人の乱心としか映らないのでしょうが、
思うにきっと彼は
このようにして「人間を卒業」したのだと考えます。

人間業の卒業の仕方には
いろいろあるでしょうが、
三島由紀夫にとっての人間業の卒業式というのは、
自衛隊員を前に、
自衛隊というアイデンティティの矛盾を解消するための
決起の呼びかけであり、
そこを上手く理解できない群れであるのならば
一足先に、もうひとつ高み行かせてもらうという
意思のアピールだったのかも知れません。

この彼の行動を理解できないうちは
人間は、いつまでも
死してもなお人間でいさせられるのだと思います。

これをただ変人と片付けてしまえる感性ならば
それは寒い感性と言わざるを得ないかも知れません。


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