中島みゆきさんの「エレーン」という曲

ひとつカミングアウトします。
実は毎日平日に書いている
ブログの記事は、
休みの土日にまとめて
1週間分書いています。

で、記事をアップする時に
誤字脱字、文脈のおかしいところなどを
手直しして公開しています。

さて、そこで本題です。
今日、記事にするネタとして
中島みゆきさんに関する事を調べていたのです。
そしたら意外な事実に出会いました。

以前、このブログで
中島みゆきさんの
「エレーン」という曲、
何度聴いても魂が震えると
書いた事があるのですが、
実はこの「エレーン」という曲、
コアな中島みゆきファンの方達にとっても
やはり評価の非常に高い曲らしく、
この曲を彼女の最高傑作と推す人も
少なくはないのです。

そんな「エレーン」は
1980年に発表された
彼女の7作目のアルバム、
「生きていてもいいですか」に
収録されている曲です。

「生きていてもいいですか」
というフレーズは
「エレーン」の歌詞の中に出てくる
言葉でもあります。
つまり、「エレーン」は
このアルバムの核なのですね。

この「エレーン」、
なんでも実話が元なのだそうで、
そのエピソードを聞いた時、
この「エレーン」という曲の持つ
パワーの源を見つけた気がしました。

そして、
それまで断片化して散乱していた
アルバム「生きていてもいいですか」の
イメージが1本の紐として繋がり、
それが理解出来た時、
このアルバムはとてつもない作品だったと
思い知りました。

ネットで仕入れた情報を
又聞きで記事にするのも
忍びないですが、
「エレーン」の秘密とは
こういう事だったのです。

「エレーン」というのは
歌詞の中の主人公で、
ヘレンという
実在した外国人娼婦が
モデルなのだそうです。
そのヘレンは
当時の中島みゆきさんの
自宅の近くに住んでいて
ある日、誰かに殺されたのです。
犯人は誰か分からないまま。
そしてある日、警察が
近所に住んでいた中島さんの自宅に
聞き込みに来たそうです。
当然、彼女は事件の事など知りませんから
刑事さんに言ったそうです。
「だったら彼女(ヘレン)を買った
客に訊けば良いじゃないですか」と。
刑事さんはこう答えたそうです。
「買った娼婦の事なんて誰も話そうとしませんよ」と。

「エレーン」の曲の中にこんな一節があります。
みんなたぶん一晩で
忘れたいと思うような悪い噂
どこにもおまえを知っていたと
口に出せない奴らが流す悪口

この一節は何かの比喩かと
思っていたのですが、
何の事は無い
ただの事実だったのです。

どなたかのブログでも
この点は言及されていましたが、
僕も全く同意で、
その方の意見と
完全に重複してしまうので
僕の見解としては
いささか説得力を欠くかもしれませんが、
それでもブログで「エレーン」の
見解を書いた人と
僕も同じ事を考えたので
あえて同じような内容を書かせて頂きます。

娼婦を買った事なんて
一晩で忘れたいし、
ヘレンという娼婦を知っていたなんて
口が裂けても言えない。
そんな現実が
ヘレンの重くて暗い哀しみや
無念さとなって
「エレーン」という曲を包み込んでいる。

そう。
それまで僕の魂を震わせ続けていたものは
「エレーン」の中に取り憑いた
浮かばれないヘレンの魂の
嗚咽ともつかない叫び
そのものだったのです。

この曲は本当に哀しい。
ただただ哀しみしか感じない。
それ以外に何も感じない。
しかもそれは
底がとてつもなく深い。

そして次の曲であり、
アルバムを締めくくる曲でもある
「異国」という曲に
故郷ではない異国の地で
独り殺された
彼女の想いは繋がっていき、
百年してもあたしは死ねない
あたしを埋める場所などないから
百億粒の灰になってもあたし
帰り仕度をしつづける

と、中島みゆきさんの
身体、声を借りて叫び、
アルバム1曲目の
「うらみ・ます」へと帰っていくのです。

うらみます
あんたのこと死ぬまで

と。

そこで
このアルバムを束ねる
1本の紐は輪だったと、
思い知らされるのです。

それを知った時、
正直鳥肌が立ちました。
何度も言って来た通り、
昔からこの「エレーン」が大好きで
ギターで弾き語りをしようとするのですが、
その度に哀しさで喉が詰まって
まともに唄えたためしがないのです。

その哀しさが
まさか殺された外国人娼婦のものだったと
知る由もありませんでした。

きっとこの曲を歌える人は、
中島さんのように
彼女のとてつもなく
深く強い哀しみを
受け止めるだけの
強いハートを持った人か、
そうでなければ
人の哀しみを感じる感受性を持たない人
なのだと思います。

思うに、この曲の収録されている
「生きていてもいいですか」は
多分、いや絶対に
ヘレンの晴れる事のない怨念で
出来ています。

間違いなく、このアルバムの中に
いや、
もしかするとこの世のどこかに
まだヘレンの魂は漂い
さまよっている、
そんな気がしてなりません。

是非、この「エレーン」の収録されている
アルバム「生きていてもいいですか」を
本当に、本当に聴いて頂きたい。
音源を買うのが惜しいというのなら、
レンタルでも良い、
誰か知っている人に
このアルバムを持っている人がいるなら、
その人から借りて聴いてでも良いです。
どんな手段でも良いから
とにかく聴いて欲しい。
とにかくこのアルバムを
歌詞カードと顔を突き合わせて
聴いて欲しい。

こんなに重いアルバムは
そうそう無いでしょうが、
それでもとにかく
これに触れて欲しい。

きっと一人でも多くの人が
このアルバムを聴く事で、
歌詞を読む事で、
何度も繰り替えし聴いて
ヘレンの叫びに耳を傾ける事で、
情念に縛られどこへも行けず、
まして生まれた国にも帰れず、
浮かばれないままの
ヘレンの魂は一つづつ
解放されていくのだと思います。

これも人助けと思って
「生きていてもいいですか」を
聴いて欲しいです。
「エレーン」の歌詞を
転載しようかと思ったのですが、
日本の法律では
著作権法の保護下にある歌詞は、
転載はおろか
コピペすら出来ないのだそうで、
歌詞の乗っているサイトの
リンクだけ貼っておきます。
是非とも読んで頂きたい歌詞です。
ここ←
しかし、ここまで
何から何まで
著作権でガチガチに縛ってしまっては、
日本の音楽産業が萎縮していくのも
無理ないですよね・・・。