模索の代償#8

そのきっかけは失業でした。
2007年の春、僕は
それまでやっていた仕事をクビになりました。
別に悪い事をしてしまったとか、
仕事上の大失態をしたとか、そういうのではなく、
会社側が事業の縮小をはじめ、
それのあおりを食らった形です。
もともと、ほとんどフリーターのような
契約社員扱いだったので、
まっさきに首が飛んだわけです。
職を失うまでは、
仕事をして曲を作って録音して、ネットで公開
という流れが
完全なルーティンワークになっていました。
毎日、自分のするべき事に追われ、
一日が24時間じゃ足りないほどでした。
ララ・ルミナスというのは
ただ音楽をやって
それで全てというわけではないのです。
音楽を軸に、そこから派生してくる
アートワークやファッション、ウェブデザイン、
さらには思想や哲学に至るまで、
その全てがララ・ルミナスのワークでした。
ララ・ルミナスとは、
あらゆる表現媒体という光を
ちょうど虫眼鏡で集め、
焦点をただ一点に集中させた様を
象徴した存在だったといえるでしょう。
仕事もこなしながらその合間に
それらのララ・ルミナスとしての
作業を組み込んで、
それこそ
ケージの中のハムスターのように、
車輪の中で仕事と自分の音楽以外に
脇目もふる余裕もないまま
ただひたすら突っ走る、
そんな毎日を過ごしていました。
そんな馬車馬のような毎日が
ある日突然、失業という形で
バランスを崩す事となりました。
それまで仕事していた時間は
ただの暇なそれに成り代わり、
その余った時間は
自分の内面を見つめ直す時間へと
充てられました。
自分とは?
人生とは?
生命とは?
存在するという事は?
様々な事を自分自身の内側を
内観する事によって、
その答えを求めようとしました。
もともと本を読むのが好きだった事もあって、
それまで読みたくても読めなかった本も
読みあさりました。
そのどれもが哲学の本。
ニーチェやサルトルに関する本などを
むさぼるように読んでは、
また答えを求めて内観する。
車輪の中を必死に走る
ハムスターだった僕は、
気付けば、本来するべき
ララ・ルミナスのワークもそっちのけに、
ぼーっと立ち止まり
ひたすら自分の内側を見続ける
人になっていったのです。
そして書いていたブログの内容も、
意識する事なく、
吸い寄せられ、
引きずられていくかのように
論理的な哲学論から、
抽象的なぶつ切りの
散文へと変わっていきました。
それが
僕の精神が破綻する
一歩手前の状態でした。
つづく・・・。