少年と太陽

少年は
川面に沈みゆく
オレンジ色の太陽を見つめていた。
膝を抱えて
小さくなっていく半円を
じっと見据えていた。
オレンジ色の空が
金色に変わり
藍色へと変わるまで、
それを見続けていた。
少年は泣いていた。
どうして自分が
泣いているのかも分からず。
けれど、
その理由を知ってしまっては
いけないと
頑に拒んでいる自分がいる事だけは
知っていた。
少年は黄昏に目を背けて、
太陽が沈んでいくのを
必死で見ないようにしていた。
太陽が沈んでいった事を
知ってしまったら、
もう自分は自分でいられないと
心の奥底で感じていたから。
やがて夜の帳(とばり)が降り
うなだれた少年は、
弱々しくその場を立ったものの
行く場所がないことを思い知って、
ただ立ち尽くすだけだった。
夜の川岸にただ一人
寄り添ってくれる筈の
蛍もそこには居なくて、
暗闇にたった独り。
少年は目を堅く閉じても、
それでもやっぱり
夜の到来を認める事はなかった。
だから得意の歌を唄って
夜である事を
彼の意識の中から
必死で追い出そうとして、
一心不乱に唄っていた。
今はもう太陽は
少年の心の中だけに
燦々と輝いているだけだった。
太陽はもう
彼の心の中にしかないことを
気付かない振りをして。