山頂に向かう孤独

The Capricorn
自らが目標と定めた山頂を
目指すと決意した人間は、
孤独でありながらも
周囲には常にライバルの脅威に
さらされている、
真の孤独とはまた違う
別の種類の孤独に
晒されていることがあるものです。
同じ山頂を目指すライバルがいる。
それが彼らの心を惑わせるのです。
自分が一番最初に
山頂に到達しなければ・・・。
常にそんな強迫観念に
囚われていたりもするかもしれません。
でも、それが巧妙な罠なのです。
実際にある、とある国では、
塔の頂きにある「栄光」に向けて
階段を、たった一人で登って行く者の
後にぴったりとくっついて
ずっと離れない魔物がいるのだそうです。
塔の頂きに向かう途中、
頂を目指す者がひとたび振り返り、
自分の真後ろにぴったりとくっついた
その魔物の姿を見てしまった瞬間、
その振り向いて魔物の姿を
見てしまった者を、
塔の階段から突き落としてしまうのだそうです。
同じように、
大いなる山の頂を目指し
その坂道を登る者は、
決して周りを見てはならないのです。
なぜなら先に書いた通り、
周りには同じ山頂を目指す
沢山の人間たちがひしめき合い、
隙あらば山道から突き落としてやろうと
考えているライバルが伸ばす手が
目に入ってしまうからです。
そのライバルの貪欲な手を見た時、
きっと山頂を目指す者は
震え上がるでしょう。
自分もライバルたちと同じく
貪欲な手を見てしまうから。
そう、ライバルたちというのは
その登山者の映し絵なのです。
その事に気付かないように
登山者はひたすら
前だけを見て山を登るのです。
脇目も振らず登るのです。
そうでもしないと、
自分の映し絵に描かれた
自分の醜さをまざまざと見せつけられるから。
だから目標と決めた山頂を目指す者は
脇目も振らず、一心不乱に
頂上を目指すのです。
頂上を目指す者は、
自分の醜さを見ないように登るから、
そういう意味で
ただただ孤独な人間なのです。