トーマスとアンジェリカ:第5話

ハザードランプの点滅音だけが、
彼女の高まる不安の鼓動を
叩き付けるように
痛いほど高鳴り、
アンディーの部屋の窓辺は
それをさらに煽り、
焦らすかの様に
一向に明かりが灯る気配は
ありませんでした。
アンジェリカは
未練がましくアンディーの部屋を
見上げながら、
また一つため息をついて
多少手荒に車のエンジンを
かけると、
道をUターンして
すごすごと
とある場所へ向かいました。
そこは海の見える
港の公園でした。
その公園の港口の向こうにそびえる
摩天楼の明かりと、
公園のある岸から
向こう岸へと繋ぐ大きな橋は、
冬の季節になると
ライトアップされて
宝石箱の中身を
空に向かって放り投げたかのように
色とりどりの明かりが
夜の空中に散りばめられていました。
アンジェリカは車を公園の駐車場に停め、
その海の見える公園にある
景色がいちばんよく見渡せる
お気に入りの場所に向かい、
そこのベンチに膝を抱えて
座りました。
幸いなことに
公園には誰もおらず、
一人で物思いにふけるには
絶好のシチュエーションでした。
つづく・・・。