風と案山子(かかし)

飛ばされてゆく
風があまりにも強過ぎて
今にも飛ばされそうな案山子
自分の立っている畑が
居場所じゃないと
どこかへ行こうとするから
その
か細い足で
どこかへ行こうとするから
あまりに強すぎる風に
体を支えられず
今にも飛ばされそうな案山子
ある日、案山子は
旅に出た
もう、どこへでも
飛んでしまえばいいと思ったから
自分の立っている畑が
いつもと違って見えるから
もう自分の役目なんか投げ出して
たった独りで旅に出た
畑を離れ
役目を放棄した案山子は
役立たず
焼却炉の中に突っ込まれ
あとは
灰と煙が残るのみ
残った灰と煙さえ
風が溶かしてしまったとさ