やはり、音楽はチームでするものだ

自分ひとりでパソコンで音楽を作って、
仕上げまでもっていき、
さらに、そうやって出来た音源をもとに
ライブまで、完全にひとりで行うことができる。

今では普通の事なのですが、
ひと昔、いや、つい最近まで、
その全てをひとりで行うことは不可能だったのです。

僕も20年前に、
これからはパソコンで、ひとりで音楽を
作っていく時代になる、
そう思ったので、バンドマンのキャリアを捨ててまで、
パソコンで音楽をプロダクションする技術や知識を
磨いてきたのです。
20年。

結果、
確かに僕が予見した世の中は実現しました。
今や音楽作りの中において
パソコンというツールは、
完全にその作業の軸となっています。

本当に自分ひとりで、何から何までやれるようになった。

しかし最近、
パソコンで音楽の何から何までを
自分ひとりで作る道を選んだことは、
もしかしたら間違いだったのかもしれないと
しばしば思うことがあります。

正直、バンドは難しいです。
自己完結できないから。
そしてそれは完璧主義であるほどに。

バンドというチームで
音楽を作っていくことは、
当然、メンバーの意向を尊重し、
そのために自分が引くことも必要です。

まして、アマチュアレベルだと
感性や実力、そして目的意識も
まちまちになりがちで、
そういう中で共通の目的に向かって
活動をしていくことのできるメンバーが揃うのは、
もう、奇跡に近いと思えます。

それに比べて、パソコンを使って自分ひとりで
音楽を作っていくことは、
細かい人間関係に煩わされることなく、
自分の美学の追求のみに、
自分の力を注ぐことができる。

これは音が作っていくには
最上の環境だと僕は信じていたのです。

そう信じて20年やってきて、
そんな自分の成れの果てを省みるに、
やはり、何か違ったのかもしれないと
思えたりもするのです。

確かに、完全に自己完結で音楽を作るなら、
より自分の頭の中にある、
より理想に近い音楽を表現することは出来ます。

けれど、たったひとりでは
「一人分以上」のエネルギーは
生むことは出来ないことに気づいたのです。
ようやくに。

やはり、
人の心を揺り動かすような音楽を出力していくためには、
チームでそれを実現していく必要があるのだと、
ようやくに、思い知ったのです。

僕が20年してこなかったのは、まさにここで、
ひたすらに自分の音楽の事だけしか
考えてこなかった結果が、いまのこの状況であるのだと。

自分ひとりが伸びるのではなく、
多数の人達が集まり、自分の役割を果たし、
皆で伸びていく。

こういう考え方を
僕は今までずっと、軽んじてきたのだろうと。

そういう考え方に、
もっと引き返しの出来たうちに
気がついていれば、
また今とは違った景色が
見えたのかもしれないと考えたりするのです。

もう今となっては、
自分の振る舞いの結果と、
自分ひとりで生み出されていく音楽の重みを、
自分ひとりで支えていくより
他に道のない話なのでしょうが、
それはそれで、
僕自身の若かりし頃であれば、
非常に惨たらしい成れの果ての姿に
写ったそれであったりするのです。

自分自身の音楽を追求するためだけなら、
こういう僕の生き方も
きっと間違ってはいなかったのでしょうが、
音楽の持つ可能性の
もっと本質的な部分にまで踏み込んで
それを実現できたのかと言えば、
僕は全くもってそれを出来ていなかったし、
とんだ方向違いをしていたのかもしれません。

結論としてやはり、
『音楽はチームだ』