山頂の大聖堂

XVI. The Tower・・・
誰もが皆、
山の頂上にある大聖堂に向かって
大急ぎで上ってゆく。
我先にと上ってゆく。
人を押しのけてでも
上ってゆこうとするから、
つまずいて転げ落ちる。
転げ落ちたらもう終わり。
きっと次はもうない・・・。
今の世の中、
とかく格差社会なんて言われてるけれど、
物質的な格差よりも
精神的な、心の格差の方が
より激しいような気がします。
これからは、
心豊かな人は、これからもより豊かに、
心貧しき人は、これからもより貧しく、
そんな世の中になっていくんだろうと思います。
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のように、
誰もが心の豊かさに気付くチャンスを与えながらも、
心貧しく、物質的な出来事ばかりにとらわれ、
ただ一つの拠り所であった
本当にか細い蜘蛛の糸という形あるものを
自らの手で切ってしまったことすらも
認めようとせず、
糸が切れたのは自分のせいじゃないと言い張る。
誰もが皆、
山の頂上にある大聖堂に向かって
大急ぎで上ってゆく。
心貧しき人ほど、高いところへ行きたがる。
我先にと、
人を押しのけてでも
上ってゆこうとするから、
つまずいて転げ落ちる。
転げ落ちたらもう終わり。
言い訳だけは一人前。
心の豊かさだけは五分の虫のそれにも満たず・・・。
心豊かな人は、
大地を愛し、高みの裾野の広さを尊ぶ。
互いに譲り合って道を往くから
ぶつかったり、ころぶこともない。
山頂の大聖堂に向かわずとも、
山の裾野からのぞむ
山頂の美しい聖堂を愛でてやまず。
あなたは、
山頂の大聖堂に行きたいですか?
それとも、
山の裾野から大聖堂の美しさを愛でていたいですか?