「過去」という時間の性質

D.10
人生を振り返るとき、
その道程のあまりの長さに
感慨を深める事もままあります。
人はその辿ってきた
道程を追体験し、
人生に於いての過去の一場面へと
回帰するのです。
その回帰は
あたかも故郷に戻ったような
そんな感覚に陥らせ、
そして人は
過去への郷愁に
心を癒される事でしょう。
人は心疲れたとき、
過去の楽しかった思い出や
喜ぶべき瞬間という「時」に
回帰し、
その疲れを癒す
能力を持っています。
つまりは、
今、この瞬間を
楽しいものとして
過ごすとき、
その「今」は
未来に於いての
癒し手となるのです。
そうした
癒されるような
体験を多く得る事の出来る人は
未来においても
そこから先へと
生きていく糧を多く持ち合わせている
そんな人であるとも言えるのです。
しかし、
過去への回帰は
未来へ進む原動力と
なるべきものでなくてはなりません。
いつまでも
「過去」という時間に
踏みとどまっていては
未来に進む事はできず、
また
自己の成長も
叶わないものとなるでしょう。
「過去」とは
一度帰って心癒された後、
再び今に立ち返り
未来という時間へと
歩を進めてゆかなければならない、
そうした性質を持つものでもあるのです。
「過去」へ回帰する時には特に
その事を留意すべきなのです。