20年の神通力

その昔、MD(ミニディスク)という
音楽を録音するメディアがありました。

これを「昔」と言ってしまうところに、
ものすごく時代の流れの速さを感じてしまいますが、
MDが少なくとも日本で覇権を握っていたのは
90年代の終わりから、
せいぜい2000年代の初頭、
まあ大体、iPodが普及する以前の時代で、
かなり革新的でありながらも
実は10年弱という、わりと短命のメディアだったりします。

もっとも、今でもまだMDを使っている人は
間違いなくいると思いますが、
最近のステレオコンポなどは
もうMDは付いていなかったりします。

さて、去年の今頃は
「さあこれから引越しだ!」という
大わらわな頃でして、
長年住んでいた、元自宅に
半ば遺跡となっていた
カセットテープやらMDを
パソコンに録音して
iTunesのライブラリに移すという
作業をしていた頃でもあります。

話が二転三転して恐縮ですが(笑)
僕がパソコンを使って音楽制作を始めたのは
1995年でした。
当時やっていたバンドが解散し、
僕自身もバンド活動から
制作活動に重点を置く音楽スタイルになった
僕のキャリアの中では
非常に重要な転換点でもあります。

今でもDTM(デスクトップミュージック)という
言葉はありますが、
僕が目指していたのは当然、
こういうアマチュア的概念のものではなく、
バンド活動から得られた
スタジオワーク体験を
自宅でする、というものでした。

しかし、素人には到底それは
実現できません。
厳密に言えば、今の時代でも、
自宅でメジャーと同等のクオリティの音源を
作ることは不可能です。

膨大な資金があるならともかく、
バイトで貯めたお金でコツコツと、
という状況では
とてもではありませんが
高価すぎる機材など夢のまた夢だったのです。

けれど最近、ここ数年、
ようやく個人レベルでも
十分にスタジオレベルの制作がこなせるようになり、
僕自身20年来見続けてきた
制作環境がやっと整い始めました。

20年。

整わない自宅制作環境の中で
ひたすら制作作業の練習を兼ねた
デモ曲(本当にデモ)を作り続けて、
それらは前述のMDに記録されました。
ちなみに、ララ・ルミナス以降は
MDでは記録していません。

で、昨年の引っ越しの際に
大量のデモ曲を収録したMDを
どうするかという問題に突き当たりました。

引越しをする日も迫ってくる中で、
大量にあるその他のテープやMDの楽曲を
パソコンに録音するには時間が足りないので、
結局、自分が過去に携わってきた音楽活動が
録音されているものを優先的に
録音していきました。

中には、高校生の文化祭でやったバンドで
ギターボーカルをやった時の音源なんかもあります。

で、20年、と言っても
実質、量としてはは3〜4年分なのですが、
パソコンによる音楽制作の練習の
努力の詰まったMDが、
今、僕の中で非常に感慨深いものとなっています。

20年という長い時間はかかったけれど、
よく一人でここまで漕ぎ着けたと
感慨もひとしおです。

もちろん、機材がどうこうという
次元の話ではなく、
自分のやってきたことの積み重ねに対してです。

いろいろと技術的な出遅れという
逆風にもめげず、
また誰に認められることもなく、
今でもまだ自分の信念を信じて
ここまでやってこれたという事実は、
僕という誰も知らない「いち音楽家」の精神を
全くぶれさせない、強靭なものに育てたのだと
確信しております。

La vie en rose!

自宅、制作部屋近影。

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