XIX. 満たされなさい

満たされなさい。
それはつまり、
「足るを知る」という事なのです。
未来とは
この先に訪れる事象ではなく、
「今」というこの瞬間の
蓄積であるという事も
忘れてはなりません。
「足るを知る」という事と
「今を生きる」という事は
密接に関係しています。
つまりはどういう事なのか。
今、この瞬間が
満たされていなければ、
今この瞬間の「蓄積」であるところの
未来もまた
満たされる事はあり得なくなるのです。
つまりは、
満たされざる願望を
抱えたまま
延々と次から次へ
波の様に押し寄せてくる
時間の堆積に
やがて押しつぶされていくのです。
それ故に、
今この瞬間を
充分にちょうど良く
物事は揃っているのである事を
気付かねばなりません。
それが「足るを知る」という事です。
今この瞬間に
「充足」を堆積させ、
押し寄せる時の波を
「充足」たらしめるのです。
果たしてあなたには
今、この瞬間
何か足らないものはあるでしょうか?
今足らなくても、
手を伸ばせばすぐに
事足りるそのようなものは別です。
手を伸ばしても届かない、
満たされざる願望。
それらは自身が
満たされないと感じている限り、
満たされないものであるという認識を
時の波の上に堆積させます。
だからこそ大切なのは
取り巻く事象に対する
視点の持ち方。
今は満たされないものも
一瞬後には満たされるものである可能性を
秘めている事を知るのです。
さらに深めて語るなら、
人の感情に
時の概念などありません。
たとえ今無くて
一瞬先にそれを得たとして、
それは時間をおいて手に入れたものではなく、
もともと初めから
手にしていたものであるのです。
それこそが
時間の概念を越えた
人の感情の真相です。
それ故に
今、満たされざる感情を
抱いているのであれば、
悟りなさい。
抱く願望は
常に時間の堆積の
どこかでは
すでに手にしているものであるという事を。
この先、すでに手にしたのであれば
今この瞬間にもそれは
手に入れた事と同じなのです。
物質的な事象に囚われてはいけません。
人は時の概念の外側にある
感情と言う波の質こそが
その本体であるのです。