探し続けている音

僕には探している音楽があります。
いや、正確には「音」と言った方がいいかもしれません。
僕が曲を作る際、
それを再現しようと思ってはみるものの、
いつも何かが違う・・・。
僕は常にその「音」を追いかけているのです。
だけど、その「音」は見つからない。
いや、見つからないんじゃなくて
思い出せないのです。
それは僕がこの世に生を受けてから
今までに聞いたことのある「音」じゃない。
多分、僕が生まれる、ずっとはるか昔に聞いた「音」。
その音は、光っていました。
もの凄く高い音で光っていました。
人の声の様で、人の声というわけでもなく、
単音じゃなく、
今生で聴いたことの無いような、
直線的であるにもかかわらず
精彩に揺らぎ、
複雑なようでシンプルな和音でした。
その表現し難い音色は
もの凄く高い音なのにも関わらず
決して耳障りな音じゃなく、
きらきらといろいろな色で光って、
時には優しく、時には力強く輝くのです。
無数とも思えるような
様々な単音のそれぞれが
独自の音で響いているのに、
それは完璧に調和がとれていて、
純粋でまっさらで、
柔らかい絹のように僕を包んでくれた「音」でした。
一番近いイメージで喩えるなら、
雲間からまっすぐ地上に向かって延び照らし出す
光のカーテンの中で鳴り響いているような「音」。
「絵」として表現は出来るんだけど、
それを「音」で表現するとなると
その細かいディテールを僕は思い出せない・・・。
再現しようとしても、
かすかな残像しか僕の感覚の中に残っていないから
どうしても再現できない。
きっと一生かかっても
その「音」を再現できないような気がする。
僕はその「音」を思い出せない・・・。
一生かかっても思い出せない気がする・・・。
一生かかっても追いかけている気がする・・・。
この懐かしい音、
知っている人いますか?