輪廻の蛇 – ロバート・A・ハインライン

ロバート・A・ハインラインは、SF小説家。
映画「スターシップ・トゥルーパーズ」の原作者。
そこに出てくる、パワードスーツという
いかにもな戦闘服(?)は、日本では80年代のロボットアニメに
多大な影響を与えているのは有名。
ちなみに作者は今は存命ではありません。

今回、僕が読んだのは
「スターシップ・トゥルーパーズ」(邦題:宇宙の戦士)ではなく、
「輪廻の蛇」という彼の短編集。
1940年代から50年代の作品群でしょうか。

冒頭に挙げた「スターシップ・トゥルーパーズ」は
上述のここに出てくるパワードスーツが
映画に出てくるそれとは少し違って
日本では、実に無骨なガンダム世代が好きそうな
兵器のようなデザイン画があり、
それのイメージもあって、
ハインラインの作品は、ハードボイルドな
それこそ言ってしまえば「むせる」ような(笑)
そういう雰囲気や文体なのだろうと思い込んで、
これまで今ひとつ、食指が伸びなかったのですが、
「輪廻の蛇」というタイトルに惹かれて読んでみました。

個人的ハードな世界観の小説家だと思っていただけに、
その思い込みは、良い意味で裏切られました。

その文体や、世界に揺蕩う空気感は思ったより柔らかく、
他のSF小説家だと、ありがちな(ステロタイプだろうか?)
理系臭のする理詰めな、硬質な感じは受けませんでした。
雰囲気で言うなら、
例えば日本のTV番組「世にも奇妙な物語」のような雰囲気。
これなら、彼の作品をもっと色々漁ってみたいと思えました。
まあ、「世にも奇妙な物語」も、もう何十年も観てないんですが・・・(笑)

で、肝心の内容ですが、
「世にも奇妙な物語」、これに尽きる。
さらっと読んでお疲れ様、みたいに楽しめます。
本のタイトルにもなっている
「輪廻の蛇」も悪くはないですが、
個人的には「象を売る男」が実に良かった。
奇妙ではあるけれど、愛を感じる。優しい。
こういうの好き。

「象を売る男」は、
妻に先立たれた男が、妻との思い出を胸に
アメリカ中を象を売って旅をするその道中、
乗ったバスが転倒してしまうのですが、
そこでは、パレードが始まったようす。
男は、他のバスの同乗者と同じように、
パレードの行列を目指して歩き始めるが(何故だか)・・・、
おっと、こっから先は本で読んでくれ(笑)
SFというより、ファンタジーとか
もっと言えば、ヒューマンドラマに近接してるでしょうか。

個人的は軽く涙腺が刺激される感じ。

このところ、やっと朝晩は涼しくなって
秋の夜長を楽しめる季節になりました。
お暇な人は、一度、読んでみるのも良いかと。

僕も、他のハインラインの作品にも触れてみようと思ってます。