ドリアン・グレイの肖像 – オスカー・ワイルド

『アトリエには薔薇の豊かな香りが満ち、
夏のそよ風が庭の木々をざわめかせると・・・』

と、実に耽美な僕好みの言葉で始まるのが
オスカー・ワイルドの
『ドリアン・グレイの肖像』

オスカー・ワイルドと言えば
かれこれ3年ほど前にシングル枠で発表した
拙作『Le Rissignol(旧タイトル:ナイチンゲール)』
はこの彼の短編小説
『ナイチンゲールと薔薇』を元にした曲でした。
まあ、そう言うわけなので
そもそも、僕はオスカー・ワイルドが好きなのだ。

彼の作品は上述の
『ナイチンゲールと薔薇』や
『幸福な王子』などの短編小説や
『サロメ』のような戯曲など、
結構たくさんあるのですが、
意外なるや、そしてこの
『ドリアン・グレイの肖像』は
ワイルド唯一の長編小説であり、
僕の指折りのフェイヴァリットな本でもあります。

僕はもともと、「ドリアン・グレイ」と言う
人物については子供の頃から知っていたのです。
そして、大方のあらすじも。

なぜかと言うと、
僕が小学生の頃愛読していた
水木しげる氏の
『妖怪大百科(世界編)』(笑)
に、妖怪として載っとった・・・(笑)

あらすじとしては、
純粋でうら若く、そして超絶に美しい容貌の
ドリアン・グレイ青年は
とある名もない画家に肖像画を描かせます。
やがて、歳を追うごとに
ドリアンは堕落し、悪徳の道を生きていきます。
しかし、ドリアンの姿は
肖像画を描かせた頃のままの
若く純粋で美しさが変わっていくことはありません。
しかし、そんなドリアンの
老いや、邪悪な人となりは
かつて描かせた自分の肖像画の中に
生々しく現れていき、
果てにはその自画像は
見るもおぞましいドリアンが為してきた
悪行を物語るような
『本当の』ドリアン・グレイの肖像となるのです。

と言うのが物語の大体の縦糸。
と言うか、これが全てかも・・・。

しかし、こうしたストーリーを物語る上での
演出や言葉の選び方(いわゆる文芸の部分)は
なかなかにうまく計算され、
実にウイットに富み、
貫徹された耽美なフィロソフィに満ちているのです。
そしてそれらを上述した
『アトリエには薔薇の豊かな香りが〜』
のようなたんびなフレーズでラッピングする、
それがこの作品の「キモ」ではないかと思います。
これこそが
オスカー・ワイルドの持ち味、旨味を
長編小説として十二分に堪能できるファクターだと思うのです。
個人的には実に読み応えのある作品です。

作品の中で、
純心だった若きドリアン・グレイを
悪徳の道へと堕落させる手引きをする
「ヘンリー卿」という貴族(?)が出てくるのですが、
こいつがまた、いちいちかっこいい台詞を吐くのです。
最後に、作中最も好きな彼のセリフで
締めくくりましょう。

『洗練を身につける方法は二つしかない。
一つは教養を身につけること。
もう一つは堕落することだ』

ヘンリー卿

痺れる・・・!

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ドリアン・グレイの肖像

Love & Peace!!