アルバム解説:パレードがくるよ

最後にアルバム
「パレードがくるよ」全体の
解説をして結びたいと思います。

以前から話しているように、
僕の拙作「パレードが来るよ」
という曲の世界観を広げて1作のアルバムに仕上げる。
目標はここにありましたが、
目標を目指して突き進んだら
目的地である「パレードが来るよ」を通り越して、
もっと遠く、いたく美しい場所にまで
飛んでしまった、そんなアルバムです。

また前作、ファーストの
「風は群青の空をそよぐ」というアルバムが
一人称的な世界観、つまり
なんとなく独りでつぶやいて
独りで納得して終わってしまっている、
そんな雰囲気のアルバムに
結果としてなってしまったので、
今度のセカンドでは
とにかく二人称で成立する世界というものを
つとめて描いたつもりです。

常に「あの人」が居る世界。

自己完結してしまっているファーストに比べて
格段に「関係性の世界を生きる生身の人間」の
息吹を感じ取ることができるのではないかと思います。
そういう意味での二人称。
自分と相手が居ないと成立しない歌詞ばかりです。
そこは気を使いましたし、
全曲新規で書き下ろしたので
気が使えたというのもあります。

この辺りが、
元となった「パレードが来るよ」が
ボツとなった理由でもあります。

歌詞を書く時の試みとして
「歌詞に文学的な要素を取り入れる」
という課題というか実験も設置しました。

で、だから?と言われればそれまでの
ちょっとしたことなのですが、
歌詞の文章の端々に
読点つまり「、」これを
効果的な場所で使っています。
いや、たったそれだけのことなのですが・・・。
けれど有るのと無いのとでは
文章としての説得力が全く違うのです。

楽曲的な部分でアルバム全体を評価するなら、
僕が以前紹介したことのある
中島みゆきさんの
「エレーン」という曲が入っている、
「生きていてもいいですか」というアルバムに
結構インスパイアされているかもしれません。

向こう(中島さん)が「真っ黒」なら
こっちは「真っ赤」でどうでしょう、的な(笑)
時代もフィールドも、そして立場も
全然違うところで産まれた作品ではありますが、
これが僕の「生きていてもいいですか」という
アルバムに対する僕なりの回答なのかもしれません。

あの「真っ黒」なアルバムに
うっすらと明かりを灯したところに
見えてくる世界というのがあるのなら、
そこにはこの僕の「パレードがくるよ」の
世界が見えてくるのではないかと。

また、これも完全に僕個人の
お楽しみの範疇の話なのですが、
僕の「パレードがくるよ」は
誠に僭越ながら、
中島みゆきさんの「生きていてもいいですか」と
合わせて聴くと美味しいよ。
いや、偉そうに並べる立場には
無いんですけどね・・・(笑)

けれど「パレードがくるよ」の
ジャケットの絵のように、
当事者は目隠しされているから
それはもしかするとその人の内的世界は
「真っ黒」なのかもしれない。
なるほど、そうか。
じゃあ中島みゆきさんの
「生きていてもいいですか」も
聴かなきゃね。
これが僕の勝手なロジックです(笑)

ともかく、
このアルバムは是非、商売云々は別として
CDで買って聴いてほしいです。

楽曲はもとより、
歌詞やCDジャケットなどのアートワーク、
全てが個別の次元のものでありながらも
何かしらのキーワードで
どこかしらの次元に繋がっています。
そうして楽曲や歌詞、アートワークなどを
繋ぐ糸が絶妙なバランス、タイミングで
巧妙に張り巡らせてあることが
読み取れるかもしれません。

このアルバムは単に12曲を並べたアルバムではなく、
もっと立体的かつ多層的に並べられていることに
気づくことができるかもしれません。

あと、まあもののついでのような
余話ではありますが、
実はこのアルバムの制作が進むにつれて、
僕はどこかそこはかとない
既視感というか既聴感を感じはじめるようになりました。

この雰囲気、昔どこかで味わったことがある、と。

それで、ようやく気付いたのですが、
僕が若かりし昔にやっていたバンドが
CDのアルバムを出すにあたって、
この「パレードがくるよ」のような世界観を
目指していたような気がする、と。

もちろん若い頃で、いろいろと力不足でしたから、
それは十分に表現することができないまま
惜しい形で残ることになってしまいました。

まあ、短命でメジャーにも行かなかったし
インディーズでも売れたバンドではなかったので、
正直な話、バンド名まで出して
それと比べてああだこうだと言いたくはないので、
バンド名までは言いませんが(知ってる人は知ってる)、
およそ四半世紀前に僕がやっていたバンドの
アルバム(正確にはミニアルバム)の続きがここにある
というか、「完全版」として復活した、
あるいは、そのバンドサウンドの
セカンドアルバムといっても
過言ではないように思えます。

おそらく僕の中で、
バンド時代から不完全燃焼のまま
くすぶっていた何かが、
この「パレードがくるよ」で昇華され、
イメージを完成、完結させることができた。
そのような認識のアルバム、
それが「パレードがくるよ」です。

若くて力がなく表現できなかった
あれやこれやを全て果たした、
そう自負できるアルバムに仕上げられたと思っています。

四半世紀前に目指したサウンドは
ここに極まりました。
けれどこれは通過点です。
今の僕はさらに高いところを目指しています。
次はさらなる絶景をみなさんに
お届けできると思います。

鮎沢郁弥セカンドアルバム
「パレードがくるよ」
全曲フル視聴できます!


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