水木しげるの戦場 – 水木しげる

「ゲゲゲの鬼太郎」でお馴染みの水木しげるさん。
彼自らが赤道直下の島へ出兵した折の
戦争体験を綴った作品が
いくつかあります。

そのいくつかを買って読みましたが、
今回は「水木しげるの戦場」を紹介します。

この本は短編集ですので、
コンパクトに読むことができます。

とかく、戦争のドキュメンタリーというものは
基本、大局的であり、かつ
指揮する幹部などの、いわゆるところの偉い人の
立場や視点から語られがちですが、
むしろ、この水木しげるさんのような
一兵卒の体験記の方が、
より現実に近い戦争体験だと思います。

1970年代生まれの僕などは、
まだ小学生の頃には
太平洋戦争をまさに体験し、出兵し、
そして生き残ってきた語り部が
まだ、多くいました。

そうした、
かつての一兵卒の語り部が話す、
昔の軍隊という体質は、
今の時代、「パワハラ」と言われて
糾弾されている人間たちの
メンタリティと同質のもののように感じるのです。

おそらく戦争の時代以前からも、
日本という国のヒエラルキーの
上層に脈々と滞留している、
それこそカルマと言ってもいいような
悪しきメンタリティなのだろうと思います。

いや、日本だけではないでしょう。
ヒエラルキーの上層に位置する人間たちだけのことでもない。

全ての人類の心の中に巣食う
「悪霊」なのかもしれません。

この「悪霊」に飲み込まれないようにするのは
もちろんのこと、
これを打ち負かし、上手にコントロール
できるようになれないうちは、
人類はまた戦争をするのでしょう。
軍靴の足音を忘れた頃に。