iRig Acousticで録音をしてみた!

※この記事は2018年3月25日に再編集されました。

iRig Acousticを使って実際に録音してみました。

結論:iRig Acousticは現場で使えるか?

結論から言ってしまいますと、
このアイテムは十分に使えるどころか、
シチュエーションによっては
仕上がりのクオリティが相当上がります。

アコギの音を電気的に増幅する手段として
一般的には
エレアコのボディの中のマイク、
あるいはピエゾのピックアップの
2種類が挙げられますが、
ここに第3の選択肢として、
いやともすれば、
前者の2種の集音〜増幅法を駆逐しかねない、
それくらいのポテンシャルを秘めた
アイテムだと思います。

レコーディング、ライブ、それぞれの現場で
求められる要素というのは
多少なり異なりますが、
今回はより音質にシビアさの求められる
レコーディングに着目し、
その中でもほとんど劣悪と言ってもいい
アコギの宅録という観点から
いろいろ検証してみたいと思います。

検証の前にセッティング

今回は検証とは言っていますが、
実際のところ今やっているプリプロの「ついで」です(笑)
完全に正確かつ客観的な検証、評価という意味では
多少、説得力に劣る部分はありますが、
相対的なニュアンスとして
結果を捉えていただきたいと思います。

まず、アコギからレコーダー部までの
シグナルフローを説明しておきます。

まずはアコギにiRig Acousticを装着。
iRig Acousticのケーブルは細いです。
見るからに断線しやすそうな佇まいですので、
うっかり引っ掛けたりしないよう
テーピングして固定しました。
写真のようにU字に固定するとより安全。

IMG_0040

そしてiRig AcousticをiPadへ(スマホでOK)
ここで集音された音は
プロセス(キャリブレーション済み)されて
出力されます。

前回、この製品を買った時に
ファーストインプレッションとして書いた
レビューでは、iPad側のエフェクトをオンにすると
レイテンシーが気になるようなことを
書いた覚えがあるのですが、
今回はほとんど遅延を感じませんでした。
(知らないうちにアップデートしていたのだろうか??)
原因、理由は不明ですが、
結果として良くなっているので
これ以上は問いません(笑)

下の写真のように、
IMG_0041

iPad(Amplitube)から出力端子が
ミニフォンジャックなので、
普通の録音機材では
何かしらの物理的な変換プラグが
必要になってくると思われます。

僕の場合、そういうものを持っていませんでしたので、
以下のように、

IMG_0042

いつもライブで使っている
オーディオインターフェイス
「MOTU Micro Book II」の
ミニジャックINへ入れて
そこからS/PDIF OUTでデジタル出力し
それを
マイクプリアンプのS/PDIF INへ入力。

マイクプリのXLR OUTから
オペをするホストのMacのオーディオインターフェイスの
XLR INへ入力。

IMG_0043

というのがシグナルフフローです。

このフローの目的は
単純にミニフォンジャックを
XLR(キャノン)に変換することにありますが、
途中に他のオーディオインターフェイスや
デジタルのマイクプリが挟まってきますので、
極力D/A A/D変換のプロセスを減らすために
S/PDIFでの機材の結線させました。

こうした条件のもとで
アコギ(スチール弦)の収録をしました。

ちなみに、マイクプリは
もう古い機材ですが
Rolandの「MMP-2」というものを使っています。

と、前置きをして
実際にどう録れたのか聴き比べてみたいと思います。

録音してみた

プリプロなので
演奏の質は問わないでください・・・(笑)

今回のアコギの録音の方向として、
『バンドサウンドの後ろでチャラチャラ鳴っている』
あのバランスを求めて録音しましたので、
割とハイは上げ気味(痛い?)で録ってあります。

今回の録音では
同じパートのテイクを
2種類のプロセスで収録しました。

一つは
スマホアプリの「Amplitude Acoustic Free」の
DSPを使って音作りしたもの。
もう一つは
今まで僕が普段からSM57(マイク)を立てて
マイクプリ(Roland MMP-2)の
DSPで音を作ったもの。
以上の2つです。

そしてどちらもマイクプリ部では
サンプルレート24bit/96kHzで処理してアナログで出力して
ホストとなるDAWの方で
24bit/48kHzでアナログ入力しています。

本当はここに加えて
実際のSM57のマイクで録音したテイクもあれば
検証記事としては上等なのでしょうが、
あくまでも「プリプロのついで」なので、
ここは割愛でご勘弁を・・・(笑)

以上の2つのプロセスの違いに関してですが、
まずスマホアプリの
「Amplitube Acoustic」の無料版の方ですが
無料のままで使うには
必要最低限のエフェクトしか搭載されておりません。
けれど、処理する音がアコギなので
EQとコンプがあれば事足りますから
不足は感じません。

アンプ部のプロセスはソリッドステートアンプが
デフォルトのようです。
搭載されているグラフィックEQで
ハイを上げたセッティングにしてあります。

Rolandのマイクプリは通っていますが、
このマイクプリのDSPは全てバイパスして録ったものを
「a」とします。

一応、Rolandのマイクプリでセッティングした音に
近づけたつもりなのですが、
録音をしたものを聴くと全然音が違いました。

そしてそのRolandのマイクプリで収録した方の
セッティングですが、
こちらのマイクプリに関しては
プリアンプ内のDSP処理で、

1:
入力信号の周波数特性のフラット化と
スモールコンデンサマイクのエミュレーション。
2:
チューブコンプのエミュレーション(一般的なセッティング)
3:
プリアンプのエミュレーション(NEVE1073らしい)

というプロセスを通過しております。
「a」とは逆に
「Amplitube」側のプロセスは
全てバイパスしてあります。

これを「b」とします。

実際に聴いてみる

さて、ともあれ録音の結果を
まず聴いてみましょう。

それをこの記事用にmp4(ビットレートは忘れた)に
エンコードしていますが、
質感の違いが分かる範囲の圧縮にしてあります。

(オーディオのウィジェットが見にくかったらごめんなさい)

a:Amplitube Acoustic(マイクプリ搭載DSPはバイパス)

b:Rolandのマイクプリ(AmplitudbeのDSPをはバイパス)

エミュレーションのキャラクターが
「a」はソリッドステート(トランジスタ系)
「b」はチューブ系という差がはっきり出ています。

可能な限り同じ音を目指して、
まあ他のバンドのオケに混ざると
実際にあまり区別もつかないのですが、
トラック単体で聴くと、全く別物ですね。

もう、この違いは
聴く人、使う(録る)人の
好みや、求められるニーズ、
シチュエーションで全然変わってくるので
良い悪いの判定がつかないです。

あくまで個人的な聴感と
実際にこのトラックを使って
他のオケと合わせてミックスしてみた
体感を総合して考えるに、
「a」(ソリッド)はクリアでミックスしやすいです。
癖がないので、後から結構な程度での
補正も可能かと感じました。
ただやはりチューブのような太さ、存在感はなく
面白みもないのも事実です。

対して「b」(チューブ)の方は
チューブならではの力感が出ています。
バンドサウンドのミックスで
後ろでチャラチャラ鳴っている程度の
バランスを目標としたトラックで、
このチューブ(エミュですが)の持ち味となる部分は
補正して結局カットされてしまうか
他の音でマスキングされてしまうのが関の山かな
とも感じました。

けれどこれがアコギ1本と歌とか、
あるいはアコギのソロやリードなどという
シチュエーションでは、
「b」の方が存在感に軍配があがる気がします。

で、結局どうしたか?

このキャラクターの違う2つのテイク。
ミックスの段階でどちらを採用したかというと、
結局、両方使ったという・・・(笑)

パンをLRに振って
ステレオにしちゃいました。

まあ僕の曲ではアコギを2トラックにして
ステレオにするという作法は
頻繁にすることなので、
個人的には結局こうなるんだ的な・・・。

ただ今まで(SM57で録っていた頃)と違って
明らかに「使える」
明確なキャラクターの音2種類なので、
ミックスでも積極的にアコギを前に出す気になれます。

改めてiRig Acousticは使えるのか?

さて、ここで元々の疑問の答えを
改めて検証して見たいと思います。

これは前回、このiRig Acousticを入手した時、
音出しのチェック程度でレビューした時にも
書いたことと重複するのですが、
まず、普通にアコギにマイクを立てて録音するにしても
自宅録音でここまで安定した音は録れません、普通。
よほど、それで食べているエンジニアでもない限り。

マイクで楽器を録音するということは、
マイクで音源のどこを狙えばいいかという
スイートスポットを経験的に熟知している
エンジニア、つまり本職の腕によるところが大きいし、
奏者の視点から見ても
特にギターという楽器は
固定されていない(普通)分、
どうしてもギターの音源部とマイクとの
位置関係が不安定になりがちなのです。
特に演奏が乗ってくると、ギターもまた
体に合わせて動いてしまうからです。

弾く身としても、その辺りを気をつけて
なるべくマイクとの距離感を一定に保ちつつ
録音をしないと、
何テイクとか録音して聴き比べると
位相が変わっていたりとかして、
編集の段階で辻褄が合わなくなることも
ありがちだったりします。

その点、iRig Acousticは
サウンドホールに固定されていますから、
ノリノリでアコギを録音することができます。
これは地味なようで非常に重要なポイントです。

今回は比較対象としては割愛してしまいましたが、
SM57で収録するより、
明らかに良好な結果が出るはずです。

後生大事にしている家宝の高級マイクと
レコーディングスタジオ、
そしてエンジニアの技術というものを
簡単にリコールできるのであれば
話は別ですが。

今後求められること、希望すること

このiRig Acousticに今後求められるものも
当然あります。
というか、商業的に成功すれば
エレキギター(ベース)用のiRigのように
「iRig Acoustic HD」とか
「iRig Acoustic Pro」とか
そういう上位互換の後発品も出てくると思います。

その際には俗に言う
「ハイレゾ対応」になってくれていることを願います。

あと、やはり出力がミニフォンジャックだけ
というのは実戦では心もとないです。

まあ、もともと
ここのメーカーのハードやソフトは
どこか「所詮ホビーユース向けだし」みたいな
割り切り感があるように感じるのですが、
シミュレーション、エミュレーションの技術が
本物と遜色なく利用できるレベルに達しているだけに、
現場で取り回しのしやすい
インターフェイスも開発してもらいたいものです。

あと、iRig Acousticはそのマイクから集音した音を
キャリブレーションをスマホのアプリでするわけですが、
この技術をMac/PCに移植してもらえると嬉しいです。

最近、録音でのアンプシミュレーターは
それまで使っていたLine6のPODから
パソコンベースの
Amplitubeに変えたので、
データのトータルリコールという点からも
ぜひ移植して欲しいです。

関連記事

https://l-enfant-d-etoir.net/ayu-ikuya/2015/12/05/irig-acousticを試してみた/

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