忘れられゆく「愛し方」

まっとうに、
と言うか、健康的に
自分を愛せないと、
人に対しても
健康的でまっとうな
恋の仕方はできないと思うのです。

歪んだ人の愛し方をする人は、
自分の中にある、
『自分に対しての肯定性』もまた
歪んで、偏っていたり、
あるいは完全に欺瞞であったり。

つまり、
『人は自分を愛するようにしか人を愛せない』のです。

それは至極単純、当たり前のことで
自分への愛し方がそのまま
人への愛し方になる、と言うこと。

だから、人を偽る人は
自分を偽っているから
人にも偽らざるを得なくなるし、
人を縛る人は、
自分の中の何かしらを縛っているから
人に対してもそれを強いるのです。

ニュースであとを絶たない
ストーカーも、不倫も、
結局のところ
「人への愛」と言う部分の歪みの結果であると
断言してもいいでしょう。
さらに厳しく踏み込んで、
何も棚上げすることなく言及するなら、
『する方も、される方も』
「歪んだ愛の場」の渦中の人、
同じ穴の狢なのでしょう。

それはもちろん、
人のせいにして丸投げにしてしまえば、
自分の中の闇に向き合わなくても済むわけで、
楽だといってしまえば、楽なのは分かります。

けれど、ことそうやって
丸投げにしてしまうほどに、
それが自分の中の心の歪みの結果であることに
気づけないままになってしまうものなのです。

世の中の、
特に、人の関わる問題についてはなおさらに、
それが何であれ、
最初に端を発したのは自分なのだということ、
そこに気づけずに
一つの問題を自分のものとして
内省しないままでいるから、
結果として何も変わらないどころか、
様々な自分の作った原因に
がんじがらめになって、
物事がとかく苦しくなるのだと思います。

それもこれも、他人以前に
『自分自身を純粋に愛することができないこと』が
常に問題の中心にあることが
始まりとなっているはずです。

いや、そんなことはない、と
頑なにそれを否定し続ける感情の内奥には、
意外とそこに、
頑なにそれを受け付けようとしない
自分の中の「愛することの歪み」が
潜んでいるものです。

それこそ、
日常生活において支障をきたさない程度のそれから、
時には、生活さえ困難になり
カウンセリングが必要なレベルまで、
程度の大小、様々な形で人は
自分の中に「歪んだ愛」を内包しているものなのです。

それに気づいて修正できるのであれば、
それが一番いいことなのかもしれませんが、
それよりももっと根本的に重要なのは
自分の中にもそういう「歪んだ愛」があるということを
把握していることであるように思えます。

自分自身の抱える
「未成熟」な愛の表現の仕方を
正しい成熟した愛し方に導くためにこそ、
人は賢くなるべきなのでしょう。

これは精神、心、そしてあるいは魂を持つ人間として
最も大切なことであると思えます。

『人類全体が愛に未成熟である』ということは、
そこから発する文化も社会も
全てが未成熟のままなのです。

だとすれば
まして、そういう質のものが
衰えていくということは
人類の未来に対して
どういう意味を持つのかも
理解できるのではないでしょうか。

人類のほとんどは、
いや、全てかもしれない。
『人類は愛し方を知らない』のです。

ごく稀に愛しかたを説いたところで、
結局それは例えば「宗教」のような
搾取やマインドコントロールのアイコンとして
歪曲されてしまうし、
やがてそれを胡散臭く感じる人達によって
さらにレイプされ、
いつしか愛することそのものが
「人として不自然な行為」なものとして
完全に否定されてしまう。
まるで、愛を駆逐させる力学が働いているかのように。

それでもやはり
心や魂のある存在としての人間にとって
『愛するということは不変の本質』
であることは変わりないし、
間違った愛し方をしていては
人類全体が痩せていくもだと思うのです。

たとえ今、
愛が衰え、文化が退廃し、
社会が崩壊して、
何もかもが残らなくなってしまったとしても、
ただ一つ、
「正しい愛し方」だけは
次代に受け継いでいくべきであると思えます。

というか、
次代へと伝えていくべきものの本質は
「愛」とその「正しい使い方」以外に
一切、何もありません。
いや、それどころか
「愛」だけが時から時へのの移ろいを
渡ることができるものなのです。

しかもそれは、何も難しいことではなく
単純に皆が皆、
『自分自身の全てを愛し切ることだけ』で
片がつくのです。

そして、その摂理の顕れとして
男と女はこの地上に存在しているのです。

本来は、これほどシンプルで簡単なことは
ないはずであるのに、
どういうわけか、人類にとって
たったそれだけのことが
至難の技になっているのです。

この地球上にこれほど
オスとメスが仲違いする種はいません。
その一点のみの根拠において
割と切実に、
正しい愛し方を身につけないと
人間は滅ぶと思う。


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